道徳脳とは何か
ニューロサイエンスと刑事責任能力
ローレンス R. タンクレディ 著
村松太郎 訳
A5判 260頁 本体価格 2,800円 2008年
道徳は社会から切り離すことはできないが,時を超えた普遍性を持っているのもまた事実である。その源は人間の脳である。社会は,安定し,持続するものでなければならない。その目的にかなった行動がひとりひとりの人間には要求される。  もともと人間の脳の中に備わっていた資質が,そのために活用されるのである・・・証拠も次々に出てきている。  その一つは,脳の辺縁系についての事実である。辺縁系は,恐怖,不快,罪悪感など,人間の原始的な情動に関与する。
この部位は脳の司令塔である前頭前野と結びついて,人間の行動に情動の色彩をそえている。  たとえば卒業試験に落第したとする。ただちに前頭前野が事実を分析し,辺縁系からこの行動に見合った情動が動員される。それは羞恥心である。  ・・・同じメカニズムにより,家族や社会が悪とみなす行為に際しては罪悪感という情動反応が動員される。たとえば試験で不正行為をすれば,罪悪感が自然に生まれるものである。  ・・・「罪」の中には,脳の機能異常が原因で,自由意志ではどうしようもないケースもあることを認めざるを得なくなる。脳科学の研究から得られた知見は,多くの行動の「道徳」の再考を迫っている。異常な行動に対する医学的処置を迫っている。罰や羞恥概念や法的処置の見直しを迫っている。(第1章より)
[目次]
まえがき
     1. 道徳の脳科学
     2. 道徳と心
     3. 心から脳へ
     4. 道徳脳
     5. あるサイコパスの死刑
     6. 自由意志は幻影か
     7. セックスに道徳はあるか
     8. 愛なきセックス,セックスなき愛
     9. 嘘をつく脳
   10. お金を欲しがる脳
   11. 狂と悪
   12. 道徳脳を育てる
訳者あとがき
注記
索引